第3回 ランチア ゼータ

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重心の高い車は嫌いなので、自分ではミニバンは所有しないと思ってました。
そこへ同業者から「珍しい車が入庫したよ!」との連絡があり、見に行ってみるとこのゼータでした。
イタリア本国ではタクシーなどにも使用され、よく見かける車でゼータは知ってましたが、流石に日本で現物を見たのはこれが最初で、スペックなどもあまり知らないのに思わず買ってしまいました。
ゼータという車はフィアット、ランチア、シトロエン、プジョーの共同開発で、同じプラットフォームを使い、各メーカーがそれぞれウリッセ、ゼータ、エバシオン、806の名称で発売されました。といっても主導権はシトロエン、プジョーにあったらしく、ショックなどにもプジョーの刻印があり、その前に乗っていたテーマワゴンとは比べものにならないくらい、乗り心地はとても良く快適でした。
シートもフランス車らしいソフトなもので、エアコンも夏場でも満足のゆくものでした。(エアコン設定温度は華氏で表示されるのに、メーター内の外気温計は摂氏なのは理解できませんでしたが・・・。)
エンジンもフィアット、ランチアではなく、シトロエン、プジョーのエグザンティアや406などの2リッター4気筒にターボを組み合わせたもので、回したからといって別になんてことのないエンジンでしたが、ターボが付いていることを感じさせない自然な過給で大排気量に乗っているような、現在のターボ車に通じる味付けでした。ただミッションのギヤリングは日本の道路環境には合いませんでした。
車重が1.7トンもあるので、1速は非常にギヤ比が低く2速とのギャップがあり、渋滞や一旦停止が多い所では1速か2速か悩むときがよくありました。 買ったきっかけは「珍しいから」ということでしたが、良い意味で期待を裏切る良い車だったこともあり、4年ほどウチに居ましたが、その間ほとんどノートラブルで、サーキットのサポートカーやツーリングの共として活躍してくれました
ただ、サーキット帰りは渋滞が多く、マニュアルシフトでは辛いことや、欲しいと言ってくれる奇特な方が現れたので譲ることにしました
たぶん二度と手に入れることは難しいでしょうが、「オートマチックでならもう一度・・・。」
と、思わせるとても良い車でした。

第2回 フィアット パンダ

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第2回はフィアットパンダです。
残念なことに新車の生産は終了してしまいましたが、イタリアを代表するベーシックカーとして、とても長い期間生産されていた車だけあって、豪華な装備は何も付いていませんが、「車ってこれで十分」と思わせる説得力を持った車です。私もその魅力に取り付かれ、3度ほど生活を共にしました。
デルタ(初号機)に乗っていた頃、雪が降った日に「4WDだから!」とわざわざ峠に向かったのですが、坂道の凍結路面でタイヤは空転を始め、ブレーキを踏んで停車していても滑ってゆく始末。あえなくデルタは前にも後ろにも進めなくなりました。しかしその横をパンダの4WDはあっさりと登ってゆくではありませんか!パートタイム4WD、そして軽い車体。改めてパンダの走破性の高さを思い知りました。イタリアでは軍用車両にも使用されていたぐらいですからね。

信州に男3人でスキーに行ったこともありました。この小さな車にむさ苦しい男3人!しんどそうに思われるかもしれませんが、これがなかなか快適で、リアシートはフラットなので横になるとまっすぐになれ眠りやすく、燃費も良く財布に優しかったことを覚えています。スキー場に早く着いてしまい、あまりの寒さにエンジンを掛けたまま全員仮眠しているときにヒーターコックが壊れ、ヒーターが利かなくなってしまい、みんなが寝てる間にこっそり直したり、わざわざ雪深いところまで入っていったのはいいものの、スタックしてしまい、みんなで押したのも今となっては良い思い出です。

修理屋の目から見るとまずセレクタ(A/T)ですが、かなりのリスクを覚悟して乗る車でしょう。ECVTにトラブルが出た場合、下手をするともう一台買えるぐらいの費用が掛かります。それにコンピューターのマッピングが日本に合っていないのか、クーラーをONにすると信号待ちでエンストと言うことがよくあります。ですのでパンダはマニュアルで元気に走る方が向いていると思います。

2WDと4WDとの違いは「4WDは忙しい!」の一言につきるでしょう。ギアが低めのセッティングのため、街中でも5速まで入ってしまいます。1000と1100とはストロークの違いが性格にハッキリ出ています。1100になってからは非常に乗りやすくなった反面、1000の頃のように回す楽しみは半減してしまいました。まあ回したところで速さは知れているのですがね。

この愛すべき小さな車と共に暮らせば、フロントウィンドー越しに見える景色もイタリアに見えるかも?
私には見えませんでしたが・・・。

第1回 ランチア デルタ


第1回は、やはりランチアデルタを取り上げたいと思います。今更スペックやヒストリーの説明は必要のないことだと思いますので省略します。私とデルタの腐れ縁はナビシートから始まりました。そのころ私はセリカGT-Four(ST165型)に乗っていたのですが、今でも鮮烈に覚えているのは、雨の日に交差点で「こんなスピードでは絶対曲がれない!」と思ったナビシートの私とは別世界の人のように、ドライバーの方が涼しい顔で何事もないように曲がっていった事です。当時のライバル、ギャランVR-4や初代レガシーなどから比べれば、画期的な回頭性の良さでした。その頃、ガレーヂ伊太利屋の仕事もしていたことで、多少安くしていただけることもあって、上記の事件から2年後に新車でデルタを購入しました!(新車は後にも先にもこれが最後)今思えば恐ろしいことをしていたと思いますが、毎月10万円オーバーの支払いで給料の大半はローンに消えました・・・。そのデルタとは約3年ほど共に暮らしたのですが、ある日「ビバリーヒルズコップ」を観て無性にフェラーリが欲しくなり、フェラーリの頭金に化けてしまいました・・・。ホント、馬鹿なことをしてました。
その後、デルタ熱も冷めていたのですが、数年後、今の赤い16 Vと出逢いました。Tipo誌の記事にもあったとおり、最初は脚がもげて自走も出来ない状態でした。話は逸れますが、私の場合良い車というのは概ね、初対面で車の方が話しかけてくるような気がします。それは綺麗とか汚いとかではなくインスピレーションのようなもので巧く説明出来ませんが、経験上話しかけて来てくれたような車とは仲良く暮らしていけました。ですので私自身が乗るつもりで購入した車は事故車かどうかなどほとんど調べたことなど有りません。いちおう試乗もしますが、まっすぐ走り、ちゃんと曲がって、止まってが出来ればまず購入してしまいます。お客さんの車はそういう訳にはいきませんが。
人と同じように自分が愛せそうなら過去に何があったかなんてあまり意味がないような気がするのですが・・・。赤い16Vも例に漏れず非常に当たりの個体だと思っています。解体屋に行く予定だったデルタからの恩返しなのか、手を掛ければ掛けてやるほどに応えてくれました。まさかレースなどで勝てるような車になるとは思いませんでしたけどね。

修理屋から診たデルタはハッキリ言って整備性などの面から見れば最悪でしょう。修理屋仲間からも「よくあんな車さわってるなあ」とよく言われます。でも慣れとは恐ろしい物で流石にHF4WDからEvo2まで毎日のようにデルタを診ていると別に普通に思えます。まあ私の人生を変えたほど思い入れのある車ですので、えこひいきもあると思いますが。

故障に関しても雑誌などで書かれるほどは手は掛からないと思います(個体差はありますが)。タイミングベルトに関しても私のところでは切れた車など有りません。10万Kmを超えている車も何台かありますが、みなさん普通に毎日お使いです。国産車などから比べれば手は掛かりますがそれを補っても非常に魅力(魔力?)あまりある車だと思います。それが証拠に私のところではデルタを手放した方はおられません。デルタからデルタへの乗り換えはありますが、事故で全損された方もまたデルタを購入されています。
どんな車でもそうでしょうが、愛情を持って接してやれば、必ず応えてくれるはずです(たぶん)!